分析美学は加速する 美と芸術の哲学を駆けめぐるブックマップ最新版

フェア - 2015.10.02

当フェアは終了しました。ご来場誠にありがとうございました。

 ただいま紀伊國屋書店新宿南店5階人文・社会売場フェア台にて『分析美学基本論文集』刊行記念・森功次プロデュース「分析美学は加速する 美と芸術の哲学を駆けめぐるブックマップ最新版」を開催しております。

 フェアではそもそも「美学とは」という問いに応える美学の基本書にはじまり、そこから分析美学の入門書を経て分析美学の各論に至る全14項目について9人の研究者が約100点を選書しました。日本で最大規模の洋書フロアを誇る紀伊國屋書店新宿南店6階洋書売場のご協力により、選書の際に選者は数多くの洋書を自由に選ぶことができた珍しいフェアです。洋書は全体のうちの約半数を展示しております。

 展示書籍は約100点ですが、店頭で無料で配布しておりますブックガイドでは選者が書籍を皆さまに余すところなく紹介するために制限なく選書し、合計166冊を紹介する32頁のブックガイドができあがりました(構成と執筆者は下に掲載しております)。ぜひこの機会に紀伊國屋書店新宿南店にお立ち寄り下さい。

場所:紀伊國屋書店新宿南店 5階人文・社会売場(棚番号01-99 06-99)
期間:2015年9月8日(月)~2015年10月25日(日)
問い合わせ:勁草書房営業部 TEL:03-3814-6861

※ご好評につき9月28日(火)より急遽フェア台を拡大し、展示書籍を大幅に増やしました。
 フェア拡大にあわせてブックガイドも最終章に「3L. 美的経験・美的価値・美的判断」を追加した第二版を
 フェア台で配布しております。

特設サイトはこちら(酒井泰斗さん「日曜社会学」内)
紀伊國屋書店新宿南店の特設サイトはこちら

「分析美学は加速する」拡大版 紀伊國屋書店新宿南店


はじめに (ブックガイドより)

 分析美学とは、現代の、主に英語圏で行われている哲学系の美学です。「美学」とは主に芸術や感性の働きについて哲学的に考える学問であり、ここに冠されている「分析」という語は哲学の一分野である「分析哲学」に由来しています。

 歴史的にみれば、分析哲学とは、概念(concept)や言語(language)の分析を中心作業とする学問でした。それと同じく1950-60年代の初期分析美学も、批評文や感性的な言葉づかいを分析することに力を入れていました。ですが、現在の分析美学を単なる言語分析の学問だと捉えるのは、もはや適切ではありません。基本となる学術スタイル(定義や主張・論証形式を明確化する、協働的な論争をつうじて皆で一緒に理論を洗練させていく、など)を踏襲しつつも、もはや用いられる道具立ては様々ですし、対象領域も大きく拡大しています。認識論や倫理学といった近隣分野の知見が活かされるだけでなく、心理学や脳科学といった認知科学との学際的研究も生まれてきましたし、また美術史や芸術批評などアート系の近隣領域、さらにはマンガやビデオゲームなどのポピュラーカルチャー業界との交流も進んでいます。いまや分析美学は、最先端哲学と、認知科学や社会科学、そして芸術文化の創造的・感性的な面とが交錯する、非常に刺激的な学術分野なのです。

 このブックフェアは、そのように発展をつづける分析美学の現状を紹介するために企画されました。まずは美学の古典から始め、分析美学の基本書を紹介しつつ、個々のトピックの最先端の成果まで紹介するという、体系的なブックフェアとなっています。また、日本随一の洋書コーナーを設ける紀伊國屋書店新宿南店さまのご協力のもと、洋書も多数取りそろえた学術的にも充実したフェアに仕上げることができました。

 会場で配布されるブックガイド冊子も、これまで美学会を牽引してきた研究者と、分析美学を最前線で研究している若手研究者との協同で、計32ページの情報量豊かなものを用意することができました。「そもそも美学という学問とは?」という基礎的な紹介から始まり、分析美学の歴史を押さえた上で、最後は11の重要項目について現在の動向が解説されるという、初学者から専門家までが手に取る価値のあるブックガイドです。書棚と一緒に、こちらもあわせてお楽しみいただければと思います。

 このブックフェアで芸術の秋を鑑賞だけで終わらせない。分析美学の、思考し、議論する楽しさを味わっていただけると幸いです。

森功次


ブックガイド構成

1. 美学の基本書(小田部胤久)
2. 分析美学史&分析美学の基本書(解説:西村清和、選書:森功次)
3. 分析美学の諸問題
 A:環境美学(青田麻未)
 B:芸術の定義(松永伸司)
 C:音楽作品の存在論(田邉健太郎)
 D:言語と美学(高田敦史)
 E:意図と解釈(河合大介)
 F:フィクション(高田敦史)
 G:物語(高田敦史)
 H:絵、写真、イメージ(高田敦史)
 I:ポピュラー文化の美学(松永伸司)
  J:芸術的価値と不道徳作品(森功次)
  K:現代美学と認知科学(源河亨)
 L:美的経験・美的価値・美的判断(森功次) ※第二版追加章


選書・執筆者プロフィール

森 功次(もり のりひで)
東京大学教務補佐員、山形大学学術研究員、文星芸術大学/桜美林大学非常勤講師。現在の研究課題は「芸術評価のための現代的価値論の構築:アートワールドの多元化をふまえて」。論文に「芸術は道徳に寄与するのか――中期サルトルにおける芸術論と道徳論との関係」『サルトル読本』(法政大学出版局、2015年)、「前期サルトルの芸術哲学――想像力・道徳・独自性」(博士論文、東京大学、2015年)、「ウォルトンのフィクション論における情動の問題――Walton, Fiction, Emotion」(『美学芸術学研究』、2010年)など。訳書にロバート・ステッカー『分析美学入門』(勁草書房、2013年)、ケンダル・ウォルトン「フィクションを怖がる」(『分析美学基本論文集』勁草書房、2015年)、同「芸術のカテゴリー」(電子出版物、2015年)、ノエル・キャロル『批評について(仮)』(On Criticism/勁草書房より2016年刊行予定)。

小田部胤久(おたべ たねひさ)
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。専門は美学。とりわけ近代美学の成立過程に関心を寄せる。著書:『象徴の美学』(東京大学出版会、1995年)、『芸術の逆説――近代美学の成立』(東京大学出版会、2001年)、『芸術の条件――近代美学の境界』(東京大学出版会、2006年)、『西洋美学史』(東京大学出版会、2009年)、『木村素衞――「表現愛」の美学』(講談社、2010年)。主な共編著:Ästhetische Subjektivität. Romantik und Moderne (Würzburg: Königshausen & Neumann, 2005)、『交響するロマン主義』(晃洋書房、2006年)、『デザインのオントロギー――倫理学と美学の交響』(ナカニシヤ出版、2007年)、Kulturelle Identität und Selbstbild. Aufklärung und Moderne in Japan und Deutschland (Berlin: LIT Verlag, 2011)

西村清和(にしむら きよかず)
東京大学大学院博士課程退学、現在、國學院大學文学部教授(東京大学名誉教授)。著書に『遊びの現象学』(勁草書房、1989年、サントリー学芸賞)、『フィクションの美学』(勁草書房、1993年)、『現代アートの哲学』(産業図書、1995年)、『イメージの修辞学』(三元社、2009年)、『プラスチックの木でなにが悪いのか』(勁草書房、2011年)ほか。

青田麻未(あおた まみ)
東京大学大学院人文社会系研究科在籍(美学芸術学/博士課程)、日本学術振興会特別研究員(DC1)。修士(文学)。専門は環境美学。論文に「自然の美的鑑賞における認知モデルの批判的検討――〈制限的認知モデル〉の構築に向けて」(『哲学の探求』41号、2014年)、「アレン・カールソンの自然鑑賞理論における美的性質――カテゴリーのはたらきに注目して」(『美学』66 (1)、2015年)。

松永伸司(まつなが しんじ)
立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員。東京藝術大学大学院美術研究科芸術学研究領域博士後期課程修了。博士(美術)。専門はゲーム研究。論文に「なにがおしゃれなのか――ファッションの日常美学」(『vanitas』No.004、アダチプレス、2015年)、「行為のシミュレーションとしてのビデオゲーム」(『音楽が終わる時――産業/テクノロジー/言説』新曜社、2015年)、「ビデオゲームにおけるプレイヤーの虚構的行為」(『美学』64(2)、2013年)など。翻訳にイェスパー・ユール『ハーフリアル』(Half-Real/New Games Orderより2016年刊行予定)、モリス・ワイツ「美学における理論の役割」(電子出版物、2015年)。

田邉健太郎(たなべ けんたろう)
立命館大学先端総合学術研究科研究指導助手。立命館大学先端総合学術研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は美学、音楽哲学、音楽文化論。論文に「「指し示されたタイプ」的存在者としての音楽作品――ジェラルド・レヴィンソンの音楽作品の存在論に関する一考察」(『美学』64(1)、2013年)、「美的実在論の現代的論点に関する一考察――ニック・ザングウィルの議論に焦点を当てて」(『コア・エシックス』9号、2013年)、「ジュリアン・ドッドの音楽作品の存在論を再検討する――聴取可能性の問題を中心に」(『コア・エシックス』8号、2012年)。

高田敦史(たかだ あつし)
本業はWeb・ゲーム会社のエンジニア。哲学上の専門はフィクションの哲学。表象とは何か?という観点から、形而上学・言語哲学のアイデアを用いつつ、フィクションと表象を巡るさまざまな哲学的問題を捉えたい。論文に「図像的フィクショナルキャラクターの問題」(Contemporary and Applied Philosophy 6巻、2014-5年)。翻訳にデイヴィド・ルイス、ステファニー・ルイス「穴」(電子出版物、2015年)。

河合大介(かわい だいすけ)
東京文化財研究所客員研究員、成城大学/日本大学理工学部非常勤講師。成城大学大学院文学研究科美学美術史専攻博士課程後期満期退学。専門は美学と現代美術。特に、分析美学における意図と解釈の問題と、日本およびアメリカにおける戦後美術。主な業績として、共訳にアーサー・ダントー『芸術の終焉以後』(After the End of Art/三元社より2015年刊行予定)、翻訳にジェロルド・レヴィンソン「文学における意図と解釈」(『分析美学基本論文集』勁草書房、2015年)、論文に「現実意図主義の瑕疵」(『美学』63(2)、2012年)など。

源河 亨(げんか とおる)
慶應義塾大学、論理と感性のグローバル研究センター共同研究員、通信教育部非常勤講師。専門は心の哲学(とくに知覚と情動)。現在の研究課題は心の哲学を応用した美的経験の分析。最近の論文に「知覚の対象範囲を見定める――感情知覚を例にして」(『現象学年報』31、2015年刊行予定)、「美的性質と知覚的証明」(『科学哲学』47(2)、2014年)、「音の不在の知覚」(『科学基礎論研究』41(2)、2014年)など。共訳に、キム・ステレルニー『進化の弟子』(勁草書房、2013年)、ウィリアム・フィッシュ『知覚の哲学入門』(勁草書房、2014年)、デイヴィッド・チャーマーズ『意識の諸相(仮)』(The Character of Consciousness/春秋社より2016年刊行予定)。単訳に、ジェシー・プリンツ『はらわたが煮えくり返る――情動の身体知覚説(仮)』(Gut Reaction/勁草書房より2016年刊行予定)。


皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

「分析美学は加速する」拡大版 紀伊國屋書店新宿南店

関連書籍

シェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加