カント倫理学の成立

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本書は、1760年代におけるカントのイギリス道徳哲学とルソーに対する思想的交渉の経緯を内容的に検討し、カント倫理学の成立過程を全体的に明らかにした。（1981年4月5日 第1版第1刷発行）

まえがき

一　問題状況
　1　研究の意図
　2　共通の思想課題
　3　1760年代のドイツ思想界
　4　1760年代のカント
　5　『実践理性批判』の主要倫理学説分類表

ニ　ホッブズ＝マンデヴィル説
　1　イギリス道徳哲学の二潮流
　2　「自愛心」の原理
　3　社会的規制原理

三　シャフツベリ＝ハチソン説
　1　「仁愛」の原理
　2　モラル・センス
　3　意義と問題点

四　道徳学の根本原理の探求
　1　倫理学的探究の出発
　2　「懸賞論文」の道徳論前半
　3　責務・道徳的自由・完全性
　4　形式的・実質的両第一原則の関係
　5　「懸賞論文」の道徳論後半
　6　ハチソンの影響
　7　「善の分解不可能な感情」
　8　クルージウスの役割
　9　カントの思想的位置

五　道徳感情
　1　不徳の概念
　2　心術の道徳的価値
　3　人間学的関心
　4　「観察者の眼」
　5　「人間本性の美と尊厳の感情」
　6　感情の調和的秩序

六　ルソーとの思想的邂逅
　1　カントの告白
　2　ルソーとの取り組みの開始
　3　ルソーとハチソン
　4　孤独と社交性

七　ルソー思想の根本概念
　1　「自己愛」の思想史的系譜
　2　良心の概念
　3　「一般意志」
　4　カッシーラーの「ルソー問題」

八　『覚書』の思想とルソーの影響
　1　自然人の概念
　2　文明人の堕落
　3　人間愛の幻想
　4　道徳感情の再検討
　5　人間の尊厳の自覚

九　新道徳原理の獲得──「共通意志」
　1　『覚書』ラテン文省察の重要性
　2　「行為の定言的必然性」
　3　「法の感覚」
　4　「共通意志」の観点

十　霊界と知恵の立場
　1　市民社会批判
　2　倫理学講義プラン
　3　「霊界の体系的組織」
　4　利他的性向と普遍的人間悟性
　5　「普遍意志の規則」と道徳感情
　6　ルソーの「一般意志」との比較
　7　形而上学的世界
　8　知恵の立場

十一　1770年「就任論文」
　1　感性界と英知界
　2　純粋悟性認識としての道徳哲学
　3　60年代の倫理学的思索の到達点
　4　批判哲学への道

補論

一　イマヌエル・カントとアダム・スミス
　1　比較の観点
　2　オンケンの比較論
　3　同時代人としてのカントとスミス
　4　批判の精神
　5　「メランコーリカー」と「堅固不動の人」
　6　理性と「公平なる注視者」

二　ハチソン・スミス・カント
　　　─道徳感情の問題をめぐって─
　1　共通の問題─道徳感情
　2　ハチソンのモラル・センス説
　3　ハチソンの仁愛論
　4　スミスのハチソン批判
　5　カントのハチソン批判

人名索引
引用カント著作索引