リーディングス　政治経済学への数理的アプローチ

これまでの政治経済学では、政治的現象を経済学的な数理手法を用いて考察してきた。これに対して本書は、分析の対象と手法を広げ、より広い範囲の問題を考察することを目標とする。つまり、実験などの新たな手法も取り入れながら、政治と経済の関係が密なものも希薄なものも分け隔てなく扱うのである。

シリーズ刊行のことば
はじめに[永田良・船木由喜彦]


第Ⅰ部　企業活動への政治的評価・規制

第1章　政治的に好ましい賃金交渉の構造：交渉力について一般化された賃金交渉の場合[中村靖彦]
1　はじめに
2　先行研究と本章の関連
3　モデル
4　Decentralizedな賃金交渉
5　Centralizedな賃金交渉
6　異なる交渉構造の比較：a＝b＝1/3
7　異なる交渉構造の比較：a＝1/3
8　結論

第2章　大規模事故リスクを伴う企業活動に対する規制[友利厚夫]
1　はじめに
2　モデル
3　対称情報下における規制
4　非対称情報下における規制
5　結語と今後の展望

第Ⅱ部　制度のパフォーマンス実験のフロンティア

第3章　キーワードオークションに関する理論・実験研究[上條良夫]
1　はじめに
2　モデル化
3　一般化第1価格オークションから一般化第2価格オークションへ
4　均衡の精緻化と理論予測
5　実験による検証
6　検索エンジンの広告枠供給“戦略”
7　結論

第4章　複数財オークションの実験研究[宇都伸之]
1　はじめに
2　ダブルトラック・オークションとは何か
3　ダブルトラック・オークション
4　実験計画
5　実験結果
6　ピットフォール価格
7　結論


第5章　公共財の自発的供給実験における選好タイプ別の貢献額：選好タイプ別の行動様式を理解することの重要性[二本杉剛]
1　はじめに
2　公共財の自発的供給メカニズム
3　タイプ別の実験研究の成果
4　パートナーとストレンジャー処理の貢献額
5　結語と今後の展望


第Ⅲ部　マクロ金融・財政分析のフロンティア


第6章　長期デフレ不況の理論的可能性：ニューケインジアンモデルと貨幣的成長モデルの統合[井上智洋]
1　はじめに
2　長期フィリップス曲線は垂直か？
3　自然失業率仮説の妥当性
4　ニューケインジアンモデルと貨幣的成長モデルの統合
5　おわりに

第7章　財政政策の効果：小国開放経済動学的確率一般均衡モデル分析と推計[市ノ川慶吾]
1　はじめに
2　理論と実証
3　モデル
4　シミュレーション
5　推計
6　まとめと今後の展望

第8章　期待形成をめぐる実証研究：マクロ・金融変数の予測の特徴[中園善行]
1　はじめに：なぜ「期待」が重要か
2　期待形成の特徴：限定合理性
3　期待形成の特徴：異質性
4　結語と今後の展望

執筆者紹介





田中　愛治（たなか　あいじ）〔監修者〕
オハイオ州立大学政治学部博士課程修了（Ph.D.）。青山学院大学法学部教授などを経て，
現在：早稲田大学政治経済学術院教授（政治学）
主著：『政治学（増補版）』（有斐閣，2011年，共著），『2009年，なぜ政権交代だったのか』（勁草書房，2009年，共著）など。

永田　良（ながた　りょう）〔編者，はじめに〕
早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位満了退学。博士（経済学）。早稲田大学政治経済学部助手・講師・助教授を経て，
現在：早稲田大学政治経済学術院教授（経済学）
主著：Theory of Regular Economies（World Scientific,2004）,『数理経済学の新展開』（早稲田大学出版部，2001年）など。

船木　由喜彦（ふなき　ゆきひこ）〔編者，はじめに〕
東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了（理学博士）。東洋大学経済学部教授などを経て，
現在：早稲田大学政治経済学術院教授（経済学）
主著：『協力ゲーム理論』（勁草書房，2008年，共著），『演習ゲーム理論』（新世社，2004年）など。