国民アイデンティティの創造
十八~十九世紀のヨーロッパ
「国民」はいかにして創られたのか。グリム兄弟、ケルト・・・。18~20世紀のヨーロッパを自在に横断、歴史的形成過程を追う。
著者 | アンヌ=マリ ティエス 著 斎藤 かぐみ 訳 工藤 庸子 解説 |
---|---|
ジャンル | 歴史・地理 |
出版年月 | 2013年2月 |
ISBN | 978-4-326-24841-4 |
判型・ページ数 | 4-6・384ページ |
定価 | 4,620円(税込) |
在庫 | 絶版 |
あたかも自明のように語られる「国民アイデンティティ」。それは近代ヨーロッパで創り出されたものにすぎない。叙事詩が発見され、国語が定められ、歴史が編まれる。特色ある風景、観光名所、民族衣装が誕生する。その過程は各国で同じ時期に、同じパターンで進行した──。今なおアクチュアルな問題を歴史的な視点から捉えなおすための必読書。
はじめに
諸国民のヨーロッパ
第Ⅰ部 祖先の特定
第一章 美の革命
カレドニアのイーリアス――スコットランド、マクファーソン
無比の文化に対する攻撃――ドイツ、スイス、オシアン
諸国民の歌――ドイツ、ヘルダー、普遍主義
吟唱詩人の百花繚乱――ロシア、『イーゴリ軍記』、ドイツ、クロプシュトック、ウェールズ、『詩仙』
ケルトの長女――フランス、ケルト学、ガリア人、ナポレオン、帝政期
祖国を救わんとする国民――ドイツ、フィヒテ、体育協会、北欧、ゴート協会、イェイイェル
国民的なるもののコスモポリタニズム――グリム兄弟
第二章 国民一つに、言語一つ
国語を作り出す――出版、アンダーソン、プロテスタンティズム
右派の言語、左派の言語――ノルウェー語
書物の言語、民衆の言語――イディッシュ語、ヘブライ語、エスペラント、アルバニア語
第三章 国民文化への国際的な後援態勢
国民たらんとする南スラヴ人――オスマン帝国、セルボ=クロアチア語、カラジッチ、『グズラ』
ホメロスの後裔たち――ギリシア民謡、ギリシア独立、独仏伊
ダキアの息子たち――ルーマニア、ダキア人、ラテン文字
伝統から民族解放へ――ブルガリア独立
第四章 一つの国家に、複数の民族
帝国内における民族の覚醒――チェコ、ハンガリー
民族間の友愛と少数民族――一八四八年、諸国民の春
第五章 根幹的な叙事詩
英雄たちの地――フィンランド、『カレワラ』
カレフの息子たち――エストニア
アルモリカの叙事詩――ブルターニュ、古代ケルト文化、シュー、『バルザス・ブレイス』
第六章 国民史
国民小説――英国、スコット
国民的情景――演劇、オペラ、歴史画、ベルギー、ポーランド
史跡――城、建築文化財、リスト化、修復
ゴート族の戦い――ドイツ、ケルン大聖堂、ゴシック・リバイバル
文化財の流布に携わった人々――消費者、文化事業
第Ⅱ部 民俗文化
第一章 明細目録
調査――仏領イタリア、ヨハン大公、農民の伝統文化
民話の大規模な収集――フランス、地方語
インド=ヨーロッパ語族における国民的なるもの――比較文献学、『ヴェーダ』、人種
民衆の旋律――国民音楽、バルトーク
第二章 描かれた国民
風景――フォンテーヌブローの森、芸術保護区、植生、農民
伝統衣装――スコットランド、キルト
アイデンティティの博覧会――万博、民俗村
愛国博物館――スウェーデン、ハセリウス、スカンセン野外博物館、民俗学協会
国民工芸――モリス、アーツ・アンド・クラフツ、ルーマニア、『ステューディオ』
叙事詩から郵便切手へ――デザイン、フィン、チェコ、ミュシャ
第Ⅲ部 大衆文化
第一章 地平としての国民
国家の民族化――ロシア、ソ連、文化的多様性、序列の下での統合
国民化教育――子供向け図書、道徳教育、公民知識、国歌
愛国的な身体――ドイツ、トゥルネン、チェコ、ソコル、ラグビー校、オリンピック
国を駆けめぐる――ツール・ド・フランス、ワンダーフォーゲル
国の自然――景観保護、国立公園
国民アイデンティティがらみの消費行動――観光
第二章 歓喜国民団
民俗文化を通じたプロレタリア教育――余暇の組織化、民衆芸能
全体主義の民俗文化――ファシスト・イタリア、ナチス・ドイツ、ヴィシー政権
国民共産主義――ソ連、エイゼンシュテイン、ハンガリー、ルーマニア、チャウシェスク
ヨーロッパ人としてのアイデンティティ
なぜ今「国民アイデンティティ」が問われるか──解説
訳者謝辞
年表
原注
人名索引
著者略歴
Anne-Marie Thiesse(アンヌ=マリ・ティエス)
大衆文学、国民とアイデンティティ、文学における合理主義を研究。国立学術研究センター(CNRS)研究部長、社会科学高等学院(EHESS)研究部長(美術社会学センター所属)。高等師範学校卒、文学教授資格取得、リヨン第二大学にて国家文学博士号取得。著書にLe roman du quotidien(Le Seuil, 2000)など。
訳者略歴
斎藤かぐみ(さいとう・かぐみ)
東京大学教養学部教養学科卒。欧州国際高等研究院(IEHEI)修了。翻訳家、フランス語講師。訳書に『力の論理を超えて ル・モンド・ディプロマティーク1998─2002』(共編訳、NTT出版、2003年)、ベアトリス・アンドレ=サルヴィニ『バビロン』、オリヴィエ・ロワ『現代中央アジア』、ジャック・プレヴォタ『アクシオン・フランセーズ』(以上、白水社文庫クセジュ)など。
解説者略歴
工藤庸子(くどう・ようこ)
東京大学名誉教授。著書に『砂漠論』(左右社、2008年)、『ヨーロッパ文明批判序説』(東京大学出版会、2003年)、『フランス恋愛小説論』(岩波新書、1998年)、『宗教vs.国家』(集英社新書、2007年)など多数。訳書にバルザック『ランジェ公爵夫人』(集英社、2008年)、コレット『シェリ』(左右社、2010年)、ルネ・レモン『政教分離を問いなおす』(共訳、青土社、2010年)ほか多数。
諸国民のヨーロッパ
第Ⅰ部 祖先の特定
第一章 美の革命
カレドニアのイーリアス――スコットランド、マクファーソン
無比の文化に対する攻撃――ドイツ、スイス、オシアン
諸国民の歌――ドイツ、ヘルダー、普遍主義
吟唱詩人の百花繚乱――ロシア、『イーゴリ軍記』、ドイツ、クロプシュトック、ウェールズ、『詩仙』
ケルトの長女――フランス、ケルト学、ガリア人、ナポレオン、帝政期
祖国を救わんとする国民――ドイツ、フィヒテ、体育協会、北欧、ゴート協会、イェイイェル
国民的なるもののコスモポリタニズム――グリム兄弟
第二章 国民一つに、言語一つ
国語を作り出す――出版、アンダーソン、プロテスタンティズム
右派の言語、左派の言語――ノルウェー語
書物の言語、民衆の言語――イディッシュ語、ヘブライ語、エスペラント、アルバニア語
第三章 国民文化への国際的な後援態勢
国民たらんとする南スラヴ人――オスマン帝国、セルボ=クロアチア語、カラジッチ、『グズラ』
ホメロスの後裔たち――ギリシア民謡、ギリシア独立、独仏伊
ダキアの息子たち――ルーマニア、ダキア人、ラテン文字
伝統から民族解放へ――ブルガリア独立
第四章 一つの国家に、複数の民族
帝国内における民族の覚醒――チェコ、ハンガリー
民族間の友愛と少数民族――一八四八年、諸国民の春
第五章 根幹的な叙事詩
英雄たちの地――フィンランド、『カレワラ』
カレフの息子たち――エストニア
アルモリカの叙事詩――ブルターニュ、古代ケルト文化、シュー、『バルザス・ブレイス』
第六章 国民史
国民小説――英国、スコット
国民的情景――演劇、オペラ、歴史画、ベルギー、ポーランド
史跡――城、建築文化財、リスト化、修復
ゴート族の戦い――ドイツ、ケルン大聖堂、ゴシック・リバイバル
文化財の流布に携わった人々――消費者、文化事業
第Ⅱ部 民俗文化
第一章 明細目録
調査――仏領イタリア、ヨハン大公、農民の伝統文化
民話の大規模な収集――フランス、地方語
インド=ヨーロッパ語族における国民的なるもの――比較文献学、『ヴェーダ』、人種
民衆の旋律――国民音楽、バルトーク
第二章 描かれた国民
風景――フォンテーヌブローの森、芸術保護区、植生、農民
伝統衣装――スコットランド、キルト
アイデンティティの博覧会――万博、民俗村
愛国博物館――スウェーデン、ハセリウス、スカンセン野外博物館、民俗学協会
国民工芸――モリス、アーツ・アンド・クラフツ、ルーマニア、『ステューディオ』
叙事詩から郵便切手へ――デザイン、フィン、チェコ、ミュシャ
第Ⅲ部 大衆文化
第一章 地平としての国民
国家の民族化――ロシア、ソ連、文化的多様性、序列の下での統合
国民化教育――子供向け図書、道徳教育、公民知識、国歌
愛国的な身体――ドイツ、トゥルネン、チェコ、ソコル、ラグビー校、オリンピック
国を駆けめぐる――ツール・ド・フランス、ワンダーフォーゲル
国の自然――景観保護、国立公園
国民アイデンティティがらみの消費行動――観光
第二章 歓喜国民団
民俗文化を通じたプロレタリア教育――余暇の組織化、民衆芸能
全体主義の民俗文化――ファシスト・イタリア、ナチス・ドイツ、ヴィシー政権
国民共産主義――ソ連、エイゼンシュテイン、ハンガリー、ルーマニア、チャウシェスク
ヨーロッパ人としてのアイデンティティ
なぜ今「国民アイデンティティ」が問われるか──解説
訳者謝辞
年表
原注
人名索引
著者略歴
Anne-Marie Thiesse(アンヌ=マリ・ティエス)
大衆文学、国民とアイデンティティ、文学における合理主義を研究。国立学術研究センター(CNRS)研究部長、社会科学高等学院(EHESS)研究部長(美術社会学センター所属)。高等師範学校卒、文学教授資格取得、リヨン第二大学にて国家文学博士号取得。著書にLe roman du quotidien(Le Seuil, 2000)など。
訳者略歴
斎藤かぐみ(さいとう・かぐみ)
東京大学教養学部教養学科卒。欧州国際高等研究院(IEHEI)修了。翻訳家、フランス語講師。訳書に『力の論理を超えて ル・モンド・ディプロマティーク1998─2002』(共編訳、NTT出版、2003年)、ベアトリス・アンドレ=サルヴィニ『バビロン』、オリヴィエ・ロワ『現代中央アジア』、ジャック・プレヴォタ『アクシオン・フランセーズ』(以上、白水社文庫クセジュ)など。
解説者略歴
工藤庸子(くどう・ようこ)
東京大学名誉教授。著書に『砂漠論』(左右社、2008年)、『ヨーロッパ文明批判序説』(東京大学出版会、2003年)、『フランス恋愛小説論』(岩波新書、1998年)、『宗教vs.国家』(集英社新書、2007年)など多数。訳書にバルザック『ランジェ公爵夫人』(集英社、2008年)、コレット『シェリ』(左右社、2010年)、ルネ・レモン『政教分離を問いなおす』(共訳、青土社、2010年)ほか多数。