倫理学的に考える

倫理学的に考える

社会心理学、認知科学、環境科学、人工現実感――。様々な科学を取り入れつつ、倫理学の視点にこだわる伊勢田流世界が組み上がる。

著者 伊勢田 哲治
ジャンル 哲学・思想・倫理
出版年月 2012年12月
ISBN 978-4-326-15424-1
判型・ページ数 4-6・352ページ
定価 3,520円(税込)
在庫 在庫あり

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倫理学の対象とする内容は幅広い。大きくはメタ倫理学、規範倫理学、応用倫理学の3つに分けられる問題群のそれぞれについて、著者は他分野の知見を取り入れながら個別に考察してきた。その過去15年あまりの思索をひとつながりに整理しなおすために、これまでの論文を加筆修正し、書き下ろし論考も追加。現代に必須の倫理学特論。

序文

Ⅰ 倫理学的理論

第1章 広い往復均衡と多元主義的基礎づけ主義
 1─1 基礎づけ主義と調和主義
 1─2 ロールズとダニエルスにおけるWREの多様なイメージ
 1─3 WREと基礎づけ主義

第2章 外在主義メタ倫理学は行為の指針を与えるか
 2─1 メタ倫理における外在主義と内在主義
 2─2 メタ倫理学的外在主義
 2─3 異文化間の道徳的不一致の問題
 2─4 道徳的一致と行為とのかかわりをめぐる問題
 2─5 行為の指針を与えるための論争をめぐる問題
 2─6 「かっこ付き」戦略と不整合主義


第3章 メタ倫理学から功利主義は導けるか――ヘアによる選好功利主義導出の試みの検討
 3─1 ヘアのメタ倫理学の枠組み
 3─2 選好功利主義の導出
 3─3 前提条件の検討
 3─4 導出の過程における問題点――選好の取捨選択
 3─5 まとめ

第4章 未確定領域功利主義――応用を意識した倫理学理論を目指して
 4─1 問題意識
 4─2 道徳的思考に関する二層理論
 4─3 ヘアの理論への批判
 4─4 提案――未確定領域功利主義
 4─5 未確定領域功利主義と社会的直観主義
 4─6 予期される批判と反論
 4─7 結び

Ⅱ 倫理学の自然化と社会化

第5章 普遍化可能性は進化論的に説明できるか――認知的不協和理論を用いた架橋の試み
 5─1 普遍化可能性
 5─2 弱者への配慮の問題
 5─3 道徳性の進化と普遍化可能性
 5─4 認知的不協和理論
 5─5 認知的不協和理論と普遍化可能性
 5─6 認知的不協和理論と生物学
 5─7 こうした考察から何がいえるのか

第6章 道徳的人格を演じること――役割理論を背景とした動機内在主義
 6─1 動機内在主義とその諸問題
 6─2 道徳意味論と道徳心理学
 6─3 既存の内在主義的回答
 6─4 役割理論
 6─5 内在主義の役割理論的解釈
 6─6 反例の処理
 6─7 先行する内在主義的解決との比較
 6─8 自然化・社会化された普遍的指令主義
 6─9 結び

第7章 ニューラルネットワークは幸せになれるか――コネクショニズムと消去主義の倫理学的含意
 7─1 倫理学と信念・欲求
 7─2 欲求の消去主義
 7─3 消去主義とメタ倫理学
 7─4 消去主義と欲求説
 7─5 提案――再定義的選好充足説
 7─6 価値と意識とのかかわり
 7─7 結び――コネクショニズムの時代の価値論

Ⅲ 倫理学的思考の広がり

第8章 倫理学理論は環境科学に貢献できるか――量的道徳ジレンマと未確定領域功利主義
 8─1 環境科学と価値判断
 8─2 未確定領域功利主義と量的道徳ジレンマ
 8─3 環境科学と倫理学理論

第9章 価値論的思考実験とバーチャルリアリティ
 9─1 バーチャルリアリティとは何か
 9─2 哲学的バーチャルリアリティ論の犯しがちな勇み足
 9─3 価値論的視点の導入
 9─4 価値論的思考実験とバーチャルリアリティ
 9─5 新しい技術が倫理学にもたらすもの

第10章 感傷性の倫理学的位置づけ
 10─1 感傷性への美学的批判
 10─2 象徴重視としての感傷性批判
 10─3 現実への対処からの批判
 10─4 感傷性擁護論
 10─5 悪徳としての感傷性批判
 10─6 「感傷性」論争の感情主義への含意

あとがき
文献表
索引


著者略歴
1968年生まれ。1999年京都大学文学研究科博士課程単位取得退学、2001年メリーランド大学よりPh.D.(philosophy)取得。名古屋大学助教授・准教授を経て、現在、京都大学文学研究科准教授。著書に『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会、2003年)、『認識論を社会化する』(名古屋大学出版会、2004年)、『哲学思考トレーニング』(ちくま新書、2005年)、『動物からの倫理学入門』(名古屋大学出版会、2008年)、『誇り高い技術者になろう』(共編著、名古屋大学出版会、2004年)、『生命倫理学と功利主義』(共編著、ナカニシヤ出版、2006年)ほか。

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