倫理学的に考える
倫理学の対象とする内容は幅広い。大きくはメタ倫理学、規範倫理学、応用倫理学の3つに分けられる問題群のそれぞれについて、著者は他分野の知見を取り入れながら個別に考察してきた。その過去15年あまりの思索をひとつながりに整理しなおすために、これまでの論文を加筆修正し、書き下ろし論考も追加。現代に必須の倫理学特論。
序文
Ⅰ 倫理学的理論
第1章 広い往復均衡と多元主義的基礎づけ主義
1─1 基礎づけ主義と調和主義
1─2 ロールズとダニエルスにおけるWREの多様なイメージ
1─3 WREと基礎づけ主義
第2章 外在主義メタ倫理学は行為の指針を与えるか
2─1 メタ倫理における外在主義と内在主義
2─2 メタ倫理学的外在主義
2─3 異文化間の道徳的不一致の問題
2─4 道徳的一致と行為とのかかわりをめぐる問題
2─5 行為の指針を与えるための論争をめぐる問題
2─6 「かっこ付き」戦略と不整合主義
第3章 メタ倫理学から功利主義は導けるか――ヘアによる選好功利主義導出の試みの検討
3─1 ヘアのメタ倫理学の枠組み
3─2 選好功利主義の導出
3─3 前提条件の検討
3─4 導出の過程における問題点――選好の取捨選択
3─5 まとめ
第4章 未確定領域功利主義――応用を意識した倫理学理論を目指して
4─1 問題意識
4─2 道徳的思考に関する二層理論
4─3 ヘアの理論への批判
4─4 提案――未確定領域功利主義
4─5 未確定領域功利主義と社会的直観主義
4─6 予期される批判と反論
4─7 結び
Ⅱ 倫理学の自然化と社会化
第5章 普遍化可能性は進化論的に説明できるか――認知的不協和理論を用いた架橋の試み
5─1 普遍化可能性
5─2 弱者への配慮の問題
5─3 道徳性の進化と普遍化可能性
5─4 認知的不協和理論
5─5 認知的不協和理論と普遍化可能性
5─6 認知的不協和理論と生物学
5─7 こうした考察から何がいえるのか
第6章 道徳的人格を演じること――役割理論を背景とした動機内在主義
6─1 動機内在主義とその諸問題
6─2 道徳意味論と道徳心理学
6─3 既存の内在主義的回答
6─4 役割理論
6─5 内在主義の役割理論的解釈
6─6 反例の処理
6─7 先行する内在主義的解決との比較
6─8 自然化・社会化された普遍的指令主義
6─9 結び
第7章 ニューラルネットワークは幸せになれるか――コネクショニズムと消去主義の倫理学的含意
7─1 倫理学と信念・欲求
7─2 欲求の消去主義
7─3 消去主義とメタ倫理学
7─4 消去主義と欲求説
7─5 提案――再定義的選好充足説
7─6 価値と意識とのかかわり
7─7 結び――コネクショニズムの時代の価値論
Ⅲ 倫理学的思考の広がり
第8章 倫理学理論は環境科学に貢献できるか――量的道徳ジレンマと未確定領域功利主義
8─1 環境科学と価値判断
8─2 未確定領域功利主義と量的道徳ジレンマ
8─3 環境科学と倫理学理論
第9章 価値論的思考実験とバーチャルリアリティ
9─1 バーチャルリアリティとは何か
9─2 哲学的バーチャルリアリティ論の犯しがちな勇み足
9─3 価値論的視点の導入
9─4 価値論的思考実験とバーチャルリアリティ
9─5 新しい技術が倫理学にもたらすもの
第10章 感傷性の倫理学的位置づけ
10─1 感傷性への美学的批判
10─2 象徴重視としての感傷性批判
10─3 現実への対処からの批判
10─4 感傷性擁護論
10─5 悪徳としての感傷性批判
10─6 「感傷性」論争の感情主義への含意
あとがき
文献表
索引
著者略歴
1968年生まれ。1999年京都大学文学研究科博士課程単位取得退学、2001年メリーランド大学よりPh.D.(philosophy)取得。名古屋大学助教授・准教授を経て、現在、京都大学文学研究科准教授。著書に『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会、2003年)、『認識論を社会化する』(名古屋大学出版会、2004年)、『哲学思考トレーニング』(ちくま新書、2005年)、『動物からの倫理学入門』(名古屋大学出版会、2008年)、『誇り高い技術者になろう』(共編著、名古屋大学出版会、2004年)、『生命倫理学と功利主義』(共編著、ナカニシヤ出版、2006年)ほか。
Ⅰ 倫理学的理論
第1章 広い往復均衡と多元主義的基礎づけ主義
1─1 基礎づけ主義と調和主義
1─2 ロールズとダニエルスにおけるWREの多様なイメージ
1─3 WREと基礎づけ主義
第2章 外在主義メタ倫理学は行為の指針を与えるか
2─1 メタ倫理における外在主義と内在主義
2─2 メタ倫理学的外在主義
2─3 異文化間の道徳的不一致の問題
2─4 道徳的一致と行為とのかかわりをめぐる問題
2─5 行為の指針を与えるための論争をめぐる問題
2─6 「かっこ付き」戦略と不整合主義
第3章 メタ倫理学から功利主義は導けるか――ヘアによる選好功利主義導出の試みの検討
3─1 ヘアのメタ倫理学の枠組み
3─2 選好功利主義の導出
3─3 前提条件の検討
3─4 導出の過程における問題点――選好の取捨選択
3─5 まとめ
第4章 未確定領域功利主義――応用を意識した倫理学理論を目指して
4─1 問題意識
4─2 道徳的思考に関する二層理論
4─3 ヘアの理論への批判
4─4 提案――未確定領域功利主義
4─5 未確定領域功利主義と社会的直観主義
4─6 予期される批判と反論
4─7 結び
Ⅱ 倫理学の自然化と社会化
第5章 普遍化可能性は進化論的に説明できるか――認知的不協和理論を用いた架橋の試み
5─1 普遍化可能性
5─2 弱者への配慮の問題
5─3 道徳性の進化と普遍化可能性
5─4 認知的不協和理論
5─5 認知的不協和理論と普遍化可能性
5─6 認知的不協和理論と生物学
5─7 こうした考察から何がいえるのか
第6章 道徳的人格を演じること――役割理論を背景とした動機内在主義
6─1 動機内在主義とその諸問題
6─2 道徳意味論と道徳心理学
6─3 既存の内在主義的回答
6─4 役割理論
6─5 内在主義の役割理論的解釈
6─6 反例の処理
6─7 先行する内在主義的解決との比較
6─8 自然化・社会化された普遍的指令主義
6─9 結び
第7章 ニューラルネットワークは幸せになれるか――コネクショニズムと消去主義の倫理学的含意
7─1 倫理学と信念・欲求
7─2 欲求の消去主義
7─3 消去主義とメタ倫理学
7─4 消去主義と欲求説
7─5 提案――再定義的選好充足説
7─6 価値と意識とのかかわり
7─7 結び――コネクショニズムの時代の価値論
Ⅲ 倫理学的思考の広がり
第8章 倫理学理論は環境科学に貢献できるか――量的道徳ジレンマと未確定領域功利主義
8─1 環境科学と価値判断
8─2 未確定領域功利主義と量的道徳ジレンマ
8─3 環境科学と倫理学理論
第9章 価値論的思考実験とバーチャルリアリティ
9─1 バーチャルリアリティとは何か
9─2 哲学的バーチャルリアリティ論の犯しがちな勇み足
9─3 価値論的視点の導入
9─4 価値論的思考実験とバーチャルリアリティ
9─5 新しい技術が倫理学にもたらすもの
第10章 感傷性の倫理学的位置づけ
10─1 感傷性への美学的批判
10─2 象徴重視としての感傷性批判
10─3 現実への対処からの批判
10─4 感傷性擁護論
10─5 悪徳としての感傷性批判
10─6 「感傷性」論争の感情主義への含意
あとがき
文献表
索引
著者略歴
1968年生まれ。1999年京都大学文学研究科博士課程単位取得退学、2001年メリーランド大学よりPh.D.(philosophy)取得。名古屋大学助教授・准教授を経て、現在、京都大学文学研究科准教授。著書に『疑似科学と科学の哲学』(名古屋大学出版会、2003年)、『認識論を社会化する』(名古屋大学出版会、2004年)、『哲学思考トレーニング』(ちくま新書、2005年)、『動物からの倫理学入門』(名古屋大学出版会、2008年)、『誇り高い技術者になろう』(共編著、名古屋大学出版会、2004年)、『生命倫理学と功利主義』(共編著、ナカニシヤ出版、2006年)ほか。