文化系統学への招待

文化の進化パターンを探る

文化系統学への招待

文理の壁を乗り越えて、文化における系譜の役割に光を当てる。手にする武器は系統学。対象は生命から文化へ――。日本初の論集!

著者 中尾 央 編著
三中 信宏 編著
ジャンル 哲学・思想・倫理
自然科学・建築
出版年月 2012年5月
ISBN 978-4-326-10216-7
判型・ページ数 A5・240ページ
定価 3,520円(税込)
在庫 在庫あり

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過去の歴史を推定する系統学の方法論を、生物だけでなく広く一般的に文化構築物の時空的変化にも適用できないか?学問の壁を超え、系譜の復元に着目して文化進化をめぐる問題群を統一的に解決しようとする文化系統学は何をもたらすのか。言語や写本、建築様式や美術図像、さらには人間社会の政治体制まで、具体的な実例を満載した1冊。

*トーマス・E・カリー氏による第4章「系統比較法による仮説検定」の英語原論文
はじめに――分野を越境する方法論[中尾央]

第1章 文化の過去を復元すること――文化進化のパターンとプロセス[中尾央]
 生物・文化・進化
 進化のパターンとプロセス
 文化進化を研究すること
 文化進化のパターンとプロセス
 文化の過去と系統学
 系統樹思考――本書の構成
 文化の過去を復元すること

第2章 「百鬼夜行絵巻」写本の系統[山田奨治]
 「百鬼夜行絵巻」をめぐる謎
 絵巻の系統推定モデル
 対象にした「百鬼夜行絵巻」
 真珠庵本系統の復元
 (真珠庵本+日文研本)系統の復元
 「百鬼夜行絵巻」からみる文化の系統
 文化進化学と文化学の接点

第3章 『老葉』に対する系統学的アプローチ――宗*(*は示に氏)による連歌の系譜[矢野環]
 導入――混態という困難に挑む
 文献学と系統学の関係とその歴史
 日本の近代文献学、数理文献学
 土左日記
 君台観左右帳記
 池坊専応口伝
 利休百会記
 内裏名所百首
 宗*(*は示に氏)の『老葉』
 写本の系統学

第4章 系統比較法による仮説検定――社会・政治進化のパターンとプロセス[トーマス・E・カリー/訳・中尾央]
 文化間比較のための系統樹
 PCMとはどのようなものか
 複雑な政治組織の進化
 オーストロネシア語社会
 進化の系列
 祖先状態
 共進化と変化率
 文化系統学――今後の展望

第5章 一九世紀擬洋風建築とG・クブラーの系統年代について[中谷礼仁]
 はじめに―擬洋風建築について
 系統年代“Systematic Age”という指標――G・クブラー『時のかたち』をめぐって
 「擬」の本質
 擬洋風のプライム・オブジェクトとシークエンス
 擬洋風建築のシークエンスにおける二次媒体の役割
 唐破風、ベランダはどこからきたか?――擬洋風建築を構成する系統年代
 塔はどこからきたか?
 多角形表現はどこからきたか?
 擬洋風における多角形塔屋の意味――旧中込学校を事例として
 『時のかたち』に掲載された唯一の図版についての見解

第6章 文化の継承メカニズム――学ぶことと教えること[板倉昭二・中尾央]
 比較認知発達科学の視点
 学ぶこと
 学習――さまざまな模倣
 意図への敏感さ――ロボットからの学習?
 動物における模倣
 誰から学ぶのか
 学ぶことの比較認知発達
 教えること
 教育と文化の継承
 教えることの発達―心の理論との関係
 動物社会における教育―教えることの進化
 ナチュラル・ペダゴジーとはなにか
 ナチュラル・ペダゴジーの留意点
 教えること/教育と文化系統
 結び

第7章 イメージの系統樹――アビ・ヴァールブルクのイコノロジー[田中純]
 はじめに――美術誌からイメージの系譜学へ
 ヴァールブルク研究のアクチュアリティ
 「情念定型」とニンフ研究
 図像アトラス「ムネモシュネ」
 「ムネモシュネ」パネルAの関係ネットワーク
 言葉・イメージ・情念
 象徴的イメージをめぐる歴史心理学として
 イメージの狩りにおけるアブダクション
 おわりに――接ぎ木された系統樹

第8章 文化系統学と系統樹思考――存在から生成を導くために[三中信宏]
 はじめに――存在の様相としてのパターン、生成の過程としてのプロセス
 進化オブジェクトの制約を越えて
 収斂するパターン分析の方法論(1)――生物体系学
 収斂するパターン分析の方法論(2)――写本系譜学
 存在パターンと生成プロセスとの関係の公理化
 生物体系学と写本系譜学における公理化の例
 分岐図と系統樹――数学としてのパターン分析
 おわりに――オブジェクトに依存しないパターンとプロセスの解析
 [BOX]パターン構造の代数的体系

おわりに――系統樹思考の裾野の広がり[三中信宏]
 どんなデータを用いて系統推定するか
 ツリーか、ネットワークか
 系統推定の方法論をどうするか
 複数の系統樹を束ねるには
 系統樹をふまえてさらなる考察を進める

チャート[三中信宏・作]
索引


中尾 央(なかお・ひさし)*
1982年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在、日本学術振興会特別研究員(名古屋大学)。専門、生物学・社会科学の哲学。
著作:『進化論はなぜ哲学の問題となるのか』(共著、勁草書房、2010)、『セックス・アンド・デス』(翻訳、キム・ステレルニー、ポール・E.グリフィス著、春秋社、2009)。

三中信宏(みなか・のぶひろ)*
1958年生まれ。東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。博士(農学)。現在、独立行政法人・農業環境技術研究所・生態系計測研究領域上席研究員ならびに東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門、生物統計学・生物系統学・生物学の哲学。
著作:『進化思考の世界』(NHKブックス、2010)、『過去を復元する』(翻訳、エリオット・ソーバー著、勁草書房、2010)、『分類思考の世界』(講談社現代新書、2009)、『系統樹思考の世界』(講談社現代新書、2006)、『生物系統学』(東京大学出版会、1997)ほか。

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